H.266/VVCとは何か?次世代高圧縮率の動画コーデックVVCについての全般

独Fraunhofer Heinrich Hertz通信技術研究所は2020年7月6日(現地時間)、Windows/macOS/Android/iOSといった各種OSでデフォルトでサポートする新しいグローバル動画圧縮規格「H.266/Versatile Video Coding(VVC)」の最終標準規格を発表した。
本文では、H.266/VVCという未来の動画圧縮規格についてご説明いたします。本記事を読んだら、H.266/VVCとは何か、H.266/VVCの特徴、歴史、利用用途、最大の課題、一般人の反応などがわかります。

H.266/VVCとは何か

H.266/VVCとはH.265/HEVCの後継となる動画圧縮標準規格で、Fraunhofer HHIがApple、Ericsson、Intel、Huawei、Microsoft、Qualcomm、Sonyなどの業界パートナーと共同で開発しました。HEVCなどの従来の符号化方式の仕組みを踏襲しています。例えば、以前のH.26xとMPEG動画圧縮規格のようにVVCのデータ圧縮アルゴリズムは離散コサイン変換(DCT)による符号化に基づいていて、以前の動画圧縮規格で使われたタイプII DCT (DCT-II)に加えて、VVCはタイプVIII DCT (DCT-VIII)も使用します。それぞれの違いは、符号化ブロックの構造、イントラ(画面内)予測、インター(動き補償)予測、直交変換、量子化、ループフィルター、エントロピー符号化/復号に分類される要素技術の改善の度合いの違いです。構成要素の改善により、動画の視覚的な品質を損なう事なく、ビットレートを約50%削減します。H.265/HEVCと同じ条件の動画ファイルを作成すると、H.266/VVCファイルサイズは約半分に抑えることが可能です。

エンコード技術名称

データ量( MPEG-2を1として比較)※参考値

処理負荷( MPEG-2を1として比較)※参考値

国際標準化された年

主な利用用途

MPEG-2

1

1

1995年

地デジ、BSデジタル放送、DVD

H.264/MPEG-4 AVC

0.5

2

2003年

ニコニコ動画、YouTube、スカパープレミアム

H.265/HEVC

0.25

20

2013年

スカパー!4KひかりTV、4KNetflix

H.266/VVC

0.125

200

2020年

次世代地デジ放送、動画配信サービス、4K / 8K / HDR / VRビデオ

H.266/VVCの特徴

高効率

柔軟なブロック分割、多様な予測技術や変換技術など、HEVCの要素技術を拡張することで、前身の規格であるH.265/高効率ビデオコーディング(HEVC)と比較して、同等の映像品質でビットレートを約50%削減し、ファイルサイズがH.265/HEVCの半分ぐらいとなります。例えば、H.265/HEVCを使用した90分の4K(3840×2160)ビデオを作成するには、約10GBのデータ容量が必要だが、H.266/VVCでは、同じ画質に必要なデータ容量は5GBと約半分に抑えることが可能です。より高速な映像伝送が可能になります。

ビデオコーデック技術の発展歴史
ビデオコーデック技術の発展歴史

処理負荷

一方で、多様な予測技術や変換技術など、HEVCの要素技術を拡張することで、動画圧縮率向上のために新たな機能を追加すればするほど、VVCエンコードとデコード処理時間は長くなってしまいます。JVETの公式資料では、評価実験においてエンコード処理量はH.265/HEVCの約10.4倍、デコード処理量はH.265/HEVCの約1.9倍です。

あらゆる種類の動画に適用可能

H.266/VVCのもう一つの利点は、あらゆる種類の動画像に適用できる分野が広がっていることです。SDとHDは勿論、超高解像の4Kと8Kビデオの伝送と保存も効率的にできます。更に、VRや高ダイナミックレンジ (HDR) 、無指向性360度映像のパノラマ、分割画面コンテンツも完全にサポートされています。

もっと読む:【HEVC編集ソフト】H.265/HEVC対応の動画編集ソフトおすすめ>>

H.266/VVCの歴史・スケジュール

2015年に、次世代映像符号化方式の要求条件の検討や技術的裏付けの探索などを行う共同探索チームJVET(Joint Video Exploration Team、後はJoint Video Experts Teamと改称)が立ち上げられ、次世代映像符号化方式の標準化に向けた事前検証が開始されました。2017年10月にJVETは最後の提案募集を行い、それとともに標準化作業を公式に開始した。 VVC標準規格の原案となる作業文書(Working Draft:WD)は、2018年4月に発行されました。その後、技術提案VVC Test Model(VTM)/作業文書(WD)が数回更新して、委員会原案(Committee Draft:CD)が2019年7月発行されました。2020年1月、CDが分科会(SC29)の参加メンバーによる投票で承認され、国際規格原案(Draft International Standard:DIS)として登録されました。2020年7月、再度の投票が行われて、最終国際規格案(Final Draft International Standard:FDIS)が承認されました。

  • @ 2017年10月:提案募集発行
  • A 2018年1月:提案方式評価
  • B 2018年4月:VTM-1, WD-1
  • C 2018年7月:技術提案VVC Test Model(VTM)/作業文書(WD)更新
  • D 2018年10月:技術提案VVC Test Model(VTM)/作業文書(WD)更新
  • E 2019年1月:技術提案VVC Test Model(VTM)/作業文書(WD)更新
  • F 2019年4月:技術提案VVC Test Model(VTM)/作業文書(WD)更新
  • G 2019年7月:委員会原案(Committee Draft:CD)発行
  • H 2019年10月:技術提案(Committee Draft:CD)更新
  • I 2020年1月:国際標準草案(Draft International Standard:DIS)発行
  • J 2020年4月:技術提案VTM/DIS更新
  • K 2020年7月:最終国際規格案(Final Draft International Standard:FDIS)発行

H.266/VVCの応用・利用用途

オンライン動画配信サービス

5Gも今商用になって、伝統的な動画配信サービスは勿論、Amazonプライム・ビデオやNetflix、Apple TV+といった動画サービスTikTok、ISLAND TVなどのサービスも今流行っていて、動画を視聴する時間が長くなりました。H.266/VVCが普及すれば、動画サービスのトラフィックを削減し、高画質化が可能になります。特に今新型コロナの感染拡大で世界中でも諸活動を自粛させていて、YouTubeなどは急激な需要増加に帯域幅を消費しきらないよう、デフォルトの画質を下げて対応していましたが、それもH.266/VVCならば画質の低下を抑えてユーザーに映像を届けられるはずです。また、圧倒的に動画圧縮効率の高いH.266/VVCを利用すれば、データ容量の限られているモバイルネットワークでの動画伝送もより高速で伝送することが可能になります。

次世代地上デジタル放送

H.266/VVCはそもそも次世代の放送(4K・8K)や動画配信サービスをターゲットとした映像符号化方式です。NHKや英BBC、韓国KBSなど放送業界もVVCに熱心しています。特に今NHKは「次世代地上放送」として、4K・8Kのスーパーハイビジョンを地上波で実現することを目指して研究開発を続けています。現在は東京と名古屋地区で、大規模な野外実験を実施しています。今はHEVCを利用しているが、衛星放送よりも低いビットレートが求められる地上波放送において、H.266/VVCを今後の有力な技術と位置づけ、圧縮効率の向上などを目指して今後も開発を進めています。H.266/VVCコーデックを利用する次世代地上デジタル放送を期待しています。

動画データの保存

子供の成長ビデオ、遊戯会などスマホに有限の容量はどうしても足りないです。高効率のH.266/VVCコーデックで動画を撮影すれば、データ要件のこのような削減により、ユーザーはストレージ容量を大幅に増やすことなく、より高品質の動画を保存することができるようになります。

  • しかし、H.266 / VVCの普及はまだまだ遠いと思います。H.265/HEVC標準の最初のバージョンが2013年1月に批准されたにもかかわらず、H.264/AVCが今最も汎用されているビデオコーデックで、H.265/HEVCに未対応のサービスやデバイスは少なくないことを考慮すると、H.266/VVCが広範囲に採用されるまでには数年もかかるでしょう。

H.266/VVC最大の課題

処理負荷

H.266/VVC最大の課題は処理負荷です。圧倒的高圧縮率の代わりに、処理負荷量も大きいです。JVETの公式資料では、評価実験においてエンコード処理量はH.265/HEVCの約10倍、デコード処理量は2倍ぐらいです。H.266/VVCの動画を生放送するには必須のリアルタイムエンコードを実施するには専用の機器が必要です。
また、エンコードされたデータを視聴するために、デコード(復元)する処理にも多くの処理負荷がかかってしまうため、高価な専用チップが必要となります。モバイル機器に搭載可能なH.266/VVC対応の新しいチップがまだ設計中です。

AV1との競争

H.266/VVCもう一つの課題はAV1との競争です。AV1はGoogleのVP9に基づき、DaalaとThorとVP10の技術を組み込んで開発され、H.265/HEVCと比べ、30%圧縮率が向上された動画コーデックです。AV1にはライセンス料が不要であるというのが最大の利点です。
今動画配信サイトNetflix、YouTube、ブラウザのChromeとFirefoxもAV1(AOMedia Video 1)というオープンソースエンコーディングテクノロジーを採用されています。果たしてH.266/ VVCは今のh.264のように汎用され、映像符号化方式(動画コーデック)の主役へと駆け上がることができるか、筆者も期待しています。

H.266/VVCに対する一般人の反応

  • 結局特許権で金取るんだろ〜?H.265が普及しない理由、理解してるのか?未だにH.264がデファクトな理由考えようぜ。そしてAV1頑張ってくれよ〜。

  • H.265も50%削減て言われてたし264比で75%減なのかしら。動画見てる時にCPUブンブン回るとかじゃないよね。

  • 主要メーカー製品にデコーダ載りそうだけどそうじゃない環境でH.265みたいにクソ重いのは変わらないのだろうか

  • ついにVVCの登場か。地デジ4K化も本格的な検討に入りそうやね。あとは特許問題やライセンス問題で揉めなきゃいいけど

  • h265も浸透してないやん。日本だけか。

  • 『4Kムービーや8Kムービーをストリーミング再生する際に特に有益』 ついにVVCの登場か。地デジ4K化も本格的な検討に入りそうやね。あとは特許問題やライセンス問題で揉めなきゃいいけど

  • 今の所4Kでのストリーミングは重すぎて一部の回線強者以外には現実的ではない、こういう技術に期待したい

  • また複数パテントプールでグチャグチャかな. メディア系の規格は ProRes 然り Apple 主導の方が良い.

最新コーデックに対応する動画処理ソフト

h.264, DivX, Xvid, mpeg-2, mpeg-4, wmv2などは勿論、av1, hevc, vp8, vp9コーデックの動画の入力も対応します。動画形式の変換、初心者向けの動画編集、オンライン動画・音楽ダウンロード、PC/Mac/iPhone画面録画、DVDコピーなど多彩な機能を備えています。

この記事を書いた人:アキ

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